沢岻 美奈子 医師
プロフィール
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。女性ヘルスケア認定医。神戸にある「沢岻美奈子女性医療クリニック」の院長。子宮がんや乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を2013年の開院以来数多く行なっている。
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出産を終え、待ちに待った赤ちゃんとの新生活がスタートしました。
しかし、なんだかイライラが止まらないと感じたり、細かなことが気になってしまったりするママもいるようです。
これは、産後精神状態が不安定になっていることから起こる、ガルガル期とも呼ばれる状態。
ガルガル期を乗り越えるためには、本人も周りも正しく理解することが大切です。
そこで今回は、ガルガル期の原因やなりやすい人、乗り越え方について詳しく解説していきます。
まずは、ガルガル期の原因や状態について確認していきましょう。
ガルガル期が起こるのは、産後ホルモンバランスが乱れることに加え、環境の変化で精神状態が不安定になることが原因です。
出産後は母性本能が高まり、子どもを守らなければという気持ちが強くなります。
その結果、子どもにとってよくない環境を排除するような行動として現れるのです。
猛獣が威嚇して子どもを守るような状態に例えられ、ガルガル期と呼ばれるようになりました。
ガルガル期でよくあるのは、以下のような状況です。
- 赤ちゃんを触られたり抱っこされたりするのが嫌
- 子育てのアドバイスにイライラしてしまう
- 理由もなく涙が出る
- 気分の変動が激しい
- これまで気にならなかったことが気になる
ひとつでも当てはまる場合は、ガルガル期の可能性があります。
一概には言えませんが、1~3ヶ月ほどで落ち着くことが多いと言われています。
しかし、子どもが半年、1歳と大きくなってからも続く人もおり、個人差が大きいのが特徴です。
特に授乳中はホルモンバランスもより乱れやすく、、イライラもピークになりやすいです。
子育てをひとりで抱え込まなくてもいい環境かどうかも、ガルガル期の期間に影響します。
なるかどうかは産後にならないとわかりませんが、以下に当てはまる人はガルガル期になりやすいと言われています。
まじめで頑張りすぎてしまう人は、育児にも手を抜きません。
できるだけ周りに頼らないで、家事も育児も自分でこなそうとしてしまいがちです。
しかし、赤ちゃんが生まれると夜泣きや授乳と子どものペースに合わせて生活しなければならず、思うように進まないこともしばしば。
理想と現実の差に落胆してイライラが募り、結果としてガルガル期に陥る可能性も高いです。
寝不足やワンオペで疲れている人も、ガルガル期になりやすいと言われています。
産後は夜も授乳や夜泣きなどで起きなければならないことが多く、まとまった睡眠がとれないこともあります。
寝不足だとどうしてもイライラしやすくなってしまいます。
赤ちゃんがミルクを飲んでくれなかったり、体調を崩したり、夜泣きがひどかったりすると手がかかります。そうすると疲れも倍増してしまいます。
パパは仕事で家事も子育ても手伝ってくれないし、周囲に頼れる人もいないという状況だと、知らず知らずのうちにストレスが蓄積されてしまいます。
イライラしてしまう状況は、本人にとっても辛いはず。
どのように乗り越えればいいのでしょうか。
お産は女性にとって、かなり体力を消耗するものです。
妊娠中は赤ちゃんをしっかり育てるために母体の栄養も持っていかれます。
産後の体は想像以上にダメージを受けています。
ストレスがたまると、体の回復も遅れてしまいます。
産後は頑張りすぎないことを心がけて、サポートしてもらえるところは積極的に頼りましょう。
家族に頼ることができない場合は、宅配サービスや時短家電などを利用するのも良い方法です。
食事と睡眠は、気持ちにも大きな影響を与えます。
自分のことは後回しにしがちな時期ですが、栄養のある食事や睡眠時間を確保することを意識して、気持ちを安定させましょう。
まとまった睡眠時間が取りにくいなら、赤ちゃんが寝ている間は一緒に昼寝をする時間を決めるのも良い方法です。
パートナーはガルガル期のママの変化が理解できなくて困っているかもしれません。
イライラをただぶつけるだけではなく、なぜイライラしたのかをはっきりと伝えましょう。
直接伝えると感情的になりそうだという場合は、LINEや手紙を使って伝えるのも良い方法です。
ガルガル期とは何かを理解してもらうのもいいかもしれません。
パートナーもどうすればいいのかわかれば対処でき、気持ちを言葉にして吐き出すことですっきりする可能性もあります。
赤ちゃんと一緒にずっと家にいるだけでは、気分も沈んでしまいます。
ママがリフレッシュする時間を作ることも大切です。
家族に赤ちゃんを預けて、カフェや美容院、映画、買い物に行くなどすると、気分も一新するかもしれません。
外出が難しい場合は、お風呂にゆっくり入る、本を読むなどして、赤ちゃんをパートナーに任せる時間を作るのも良い方法です。
「出産後急に怒りっぽくなった……」など、家族がガルガル期の場合、どんな接し方を意識すべきなのでしょうか。
対処法をご紹介していきます。
「怒りっぽいから……」と距離を置くのではなく、ガルガル期の不安定な気持ちに寄り添い、不安や不満を受け止めてあげることが大切です。
ガルガル期の気持ちは本人でもよくわからない理由で起きますから、ましてや家族でも理解しにくいものです。
基本的に否定や批判、アドバイスはしないで、話を聞いて気持ちを受け止めてあげることが大事です。
ストレスの原因となることが分かったら、可能な限り避けるようにして、負担を減らすことができます。
パートナーの方は、自分のことは自分でするよう心がけましょう。
これまでしてもらっていたことも、赤ちゃんのお世話で手が回らなくなっているかもしれません。
赤ちゃんのお世話は想像以上に大変なうえ、産後の体調もまだ完全に回復していないため、大人のお世話までなかなか手が回りません。
料理や洗濯など、今までやったことがないことも、この機会にチャレンジしてみるのもいいでしょう。
役割を分担するのではなくて、パートナーの方にはできれば率先して家事を担ってほしいですね。
シャツにアイロンをかけるのが大変なら、クリーニング店に出すなど、負担を減らす方法を提案してみてもいいですよ。
ママがリフレッシュできるよう、息抜きの時間も確保してあげましょう。
赤ちゃんとずっと家にこもりきりでは、ストレスもたまりガルガル期もなかなか収まりません。
休みの日に赤ちゃんのお世話を引き受けて、自由に過ごさせてあげると効果的です。
そのためには、赤ちゃんのお世話がひと通りできるようになる必要があります。
息抜き時間中は、余程のことがない限りママに連絡して助けを求めないことも大切です。
中には、ガルガル期に極度のストレスがたまり、精神面のバランスが崩れる人もいます。
ガルガル期以外に気を付けたい症状について確認していきましょう。
以下のようないずれかの症状が見られる場合は要注意です。
- 母親失格と自分を責めるようになる
- 不眠になる
- 食欲不振で体重が減る
- 過食気味になる
- ぼーっとして判断力が低下する
- 笑わなくなる
- 子どもをかわいいと思わなくなる
- 消えてしまいたいと思ってしまう
ひとつでも当てはまるなら、産後うつの可能性も考えられます。
長く続くようなら、無理せず休んだり専門の機関に相談したりしましょう。
産後うつの可能性がある場合は、メンタルクリニックや産婦人科、自治体の助産師などに相談してみましょう。
産後うつは心の病気で、なった場合はお薬を中心としたカウンセリングなどの治療が必要です。
産婦人科や助産師に相談すれば、専門家を紹介してくれるでしょう。
自治体の相談窓口を頼るのもいいかもしれません。
妊娠、出産による体や環境の変化は、女性にとって大きなものです。
産後の女性は誰しも、ホルモンバランスの影響で一時的にガルガル期になることがあるため、不安や罪悪感を覚える必要はありません。
ただし、ガルガル期の対応次第では周囲の人との関係に影響があったり、産後うつにつながったりする可能性もあるでしょう。
まずは、ガルガル期をきちんと理解し、上手く付き合っていくことが大切です。
- ガルガル期は産後のホルモンバランスの乱れにより起こる
- ガルガル期になりやすいのはまじめな人やストレスを抱えている人
- 本人も周囲もまずはガルガル期について理解すること
- 症状によっては産後うつの可能性もある
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