「更年期に入ってから気分の落ち込みが激しい」「仕事や家事にやる気が出ないのはなぜ?」と悩む女性は多いもの。
なかには「寝たきりになるのではないか?」と不安になる人もいますよね。
更年期を迎えた女性の心身は不安定で、うつのような症状がみられることもあります。
気分が落ち込んだり、やるべきことが手につかなかったりすると、戸惑う気持ちが出るのは当然です。
今回は、更年期うつの原因やいつまで続くかを解説するとともに、症状の特徴やうつの治し方を解説します。
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閉経前後の5年間を合わせた10年間の更年期は、心身に大きな変化が起こる時期です。
更年期女性のなかには、抑うつ症状に悩む人が多くいます。
ここからは、更年期にうつがみられる原因をみていきましょう。
更年期には、卵巣機能が低下し、女性ホルモンの分泌量が急激に減少します。
すると、ホルモン分泌と同じ脳の視床下部が働きを司っている自律神経に乱れが生じ、ストレス耐性が低下するため、うつ症状を引き起こしやすくなるのです。
卵巣機能の低下によって、女性ホルモンの1つである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌量が減少すると、精神を安定させて幸福感を抱きやすくする「セロトニン」という神経伝達物質の生成も減ってしまいます。
セロトニンの分泌量が低下することで、抑うつ症状だけでなく、睡眠障害を引き起こすことも。
ストレスも、うつ症状の原因の1つです。
多くの更年期女性は、夫婦間の問題や親の介護、子どもの自立などを経験するため、ストレスを抱えやすい状況に置かれています。
更年期を迎えると、ストレス耐性が下がるケースも少なくないため、こまめなリフレッシュが大切です。
更年期うつをはじめとした更年期症状が続く期間は、多くの場合は1年〜2年、長くても2年〜3年といわれています。
50代後半〜60代前半になると、女性ホルモンが少ない状態に身体が慣れるため、症状が落ち着いてくるでしょう。
しかし、症状の程度や持続期間には、個人差があることに注意が必要です。
更年期うつを放置していると、重症化して寝たきりになるケースも。
軽いうちに早めの対応をおこなうことで、症状の悪化を防げる可能性があります。
単なる気分の落ち込みや意欲低下だと片付けずに、医療機関を受診しましょう。
以下に示すポイントに当てはまり、2週間以上症状が続くなら、更年期うつの可能性を疑いましょう。
- 1日中やる気が起きない
- 何にも心が動かず、感情が湧かない
- 食欲がない
- 不眠が続いている
- 自分のことを責め続けている
- 生きる気力が湧かない
更年期うつ病では、精神症状だけでなく、ホットフラッシュや発汗などの身体症状が現れることが多いのが特徴です。
血中のエストロゲンや卵胞刺激ホルモンなどの数値にも異常がみられます。
一方で、気分障害の1つであるうつ病では、身体症状よりも精神症状の訴えが強いケースが多いです。
更年期うつを改善するには、生活習慣を見直すことが効果的です。
食生活を整えたり、運動習慣を取り入れたりするとよいでしょう。
納豆や豆腐などの大豆製品に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをするため、積極的な摂取がおすすめです。
ウォーキングなどの有酸素運動は、セロトニンの分泌を促進する効果が高いといわれています。
ローズやゼラニウムなどのアロマを、芳香浴やマッサージで取り入れるのもよいでしょう。
更年期にうつ症状などの精神症状がみられる時、受診する診療科を迷うのではないでしょうか。
更年期うつとうつ病は、きちんと区別する必要があります。
さらに、更年期うつの治療法も知っておくことで、受診後のイメージがつきやすいでしょう。
ここからは、更年期うつで受診すべき診療科や治療方法を解説します。
抑うつ状態や、物事に対する意欲の低下が軽度〜中程度の場合は、更年期障害の症状の可能性を考えて、婦人科や更年期外来を受診するとよいでしょう。
単なる気分の落ち込みだと思っていても、更年期うつ病やうつ病が隠れている可能性もあるため、検査を受けて原因を知ることが大切です。
抑うつ症状がひどく、日常生活に支障が出たり、生きることそのものを否定する考えが湧いてきたりする場合は、うつ病の可能性があるため、精神科や心療内科を受診すべきです。
更年期は環境の変化が多く、ストレスが溜まりやすい時期。
ホルモンバランスの乱れが原因だと片づけずに、病院を受診しましょう。
更年期うつには、さまざまなアプローチがおこなわれます。
ここからは、具体的な治療方法についてみていきましょう。
抑うつなどの精神症状以外にも、ほてりや発汗、肩こりなどのさまざまな更年期症状がみられる場合は、体外から女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法」がおこなわれます。
ホルモンバランスの変化が原因の抑うつには効果を発揮するでしょう。
子宮体がんや乳がんなどでホルモン治療をできない人や、ホルモン補充療法でも抑うつ症状が改善しない人には、漢方が処方されることも。
使われる漢方の代表例は、以下のとおりです。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 加味帰脾湯(かみきひとう)
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
更年期障害患者の体質や症状に合った漢方を服用することで、抑うつ症状の改善が期待できますよ。
ホルモン補充療法を数ヶ月おこなっても、更年期うつが改善できない場合は、抗うつ薬や抗不安薬などの向精神薬を用います。
「抗うつ薬は一生飲み続けないといけないのではないか」と不安に思う人もいますが、症状が改善されるまで治療をおこなうケースが多いです。
更年期にともなう不安感や焦り、ストレスを抱えている場合、カウンセリングが効果的なこともあります。
自分の気持ちを客観視することで、心の整理がつきやすくなるでしょう。
更年期には、ホルモンバランスが変化することで、抑うつ症状がみられることがあります。
仕事や家庭でも大きな変化を迎える時期で、ストレスがかかりやすいため、うつのような症状に悩む人も。
更年期うつが続く期間は、多くの場合は1年〜2年、長くても2年〜3年といわれています。
しかし、症状の程度や続く期間には個人差があるため、自分がつらいと思ったら、早めに治療を受けるべきです。
自律神経を整えるために生活習慣を見直すとともに、症状の程度に合わせて婦人科や精神科・心療内科を受診しましょう。
- 更年期は、卵巣機能の低下による女性ホルモン分泌の低下やストレスで自律神経が乱れるため、心身のバランスが崩れやすい
- エストロゲンの減少は、セロトニンの不足を引き起こすため、うつや不眠が現れることも
- 女性ホルモンが少ない状態に身体が慣れる50代後半〜60代前半には、うつ症状が落ち着いてくる
- 更年期うつを改善するには、食生活や運動習慣を見直そう
- 更年期うつとうつ病は、きちんと区別して治療する必要があるため、早めに病院を受診しよう
