菅原 健 医師
プロフィール
健友堂クリニック院長。山梨大学で漢方外来担当として、漢方薬を活用した治療を約8年担当。 更に良い治療を求めて西洋医学と東洋医学の双方を探求する。現段階で一番良い治療方法を提案しているが、更に新たに考えられる最高の医療があれば提供したいと考えている。
https://www.kenyudo-clinic.com/
漢方薬は飲みやすくしたエキス剤や市販薬が数多くあり、世間によく知られています。
漢方薬は効き目がおだやかなため、副作用がないと思っている人がいますが、それは誤った認識です。
今回は漢方薬が合わないときの症状や副作用が出る原因、注意するべき成分について分かりやすく解説します。
漢方薬が合わないときに出る症状はさまざまあります。
一般によくみられる症状や、重症化しやすい症状について確認しましょう。
発疹・発赤・かゆみなどの皮膚症状は、漢方薬が合わないときによくみられる症状で、これは漢方薬に限らず薬全般に言われる症状で「薬疹」といわれる反応です。
薬疹は服用中の薬を中止するとほとんどのケースで改善しますが、薬疹のなかには重症例もありますが、一般の薬に比べると漢方薬で重症になることは少ないでしょう。
胃腸症状でよくみられるのは、胸やけ・胃痛・胃もたれ・食欲不振・下痢です。
地黄による胃重感、大黄・芒硝による下痢軟便はよく知られるところです。
漢方薬を中止しなくても、服用時間を食前から食後に変えたり、服用量を減らしたりすると症状の改善がみられることもあります。
また細啜といって少しずつ服用する方法がとられることもあります。
黄芩などの生薬が入る漢方薬には、ときに膀胱炎のような症状が出ることがありますが、発症のしくみはまだわかっていません。
具体的な症状は、トイレが近くなる・尿に血液が混ざる・尿をするときに痛みがでるなどがあります。
漢方薬が合わないときに、肝機能障害があらわれるのは一般の薬に比べて非常にまれです。
柴胡(サイコ)や黄芩(オウゴン)など一部の生薬が含まれる漢方薬で、服用開始後1~2週間のうちに発症することがあります。
漢方薬を飲み始めてから、全身がだるくなったり、白目や肌が黄色くなったりするのは肝機能障害の初期症状である可能性が高いです。
血液検査をすると、ASTやALTなど肝機能検査の値に上昇がみられます。
漢方薬が合わないときに間質性肺炎が起こるのはまれですが、発症すると重症化する危険性があるので注意してください。
間質性肺炎の初期症状には、動いたときの息切れや、痰が出ない咳があります。
症状が進行すると、じっとしているときでも息切れをするようになり、酸素吸入が必要になるケースもあります。
なかには急激に症状が悪化する人もいるため、初期症状が出たら早めに診察を受けましょう。
漢方薬が合わないときの症状が起こる原因は次の3つです。
それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
漢方薬も西洋薬と同じようにアレルギー反応があらわれることがあります。
含まれている成分にアレルギーがあると、発疹・じんましん・下痢などの症状があらわれます。
漢方薬は本来、服用する人の体質や病状をあらわす「証」をもとに、どの漢方薬を処方するかを決定します。
西洋医学からみると同じ病気でも、漢方治療の考え方でみると証は一人ひとりで異なるため、個人にあった漢方薬が必要です。
そのため、証に合っていない漢方薬が処方されると、効果が得られないどころか、かえって体調不良を引き起こすことがあります。
漢方薬は、いくつかの生薬を組み合わせた薬です。
複数の漢方薬を服用していると、知らずしらずのうちに一部の生薬が通常より多量になっている可能性があります。
西洋薬と同じように多量に服用すると、副作用が出やすくなったり、肝臓に余計な負担がかかったりします。
漢方薬で副作用の症状が出やすい人は次のとおりです。
- 過去に薬を服用して重い副作用が出た経験のある人
- アレルギー体質の人
- 体質的に胃腸が弱い人
- 病後など体力が大きく落ちている人
- 妊娠中・授乳中の女性、妊娠の可能性がある女性
- 高齢者
- 肝臓や腎臓の機能が低下している人
- ほかの薬を服用している人
- 漢方薬を飲み始めて3ヶ月以内の人
漢方薬を始めてから以下の症状があらわれ、1週間以上続くようなら中止して医師や薬剤師に相談してください。
- 普段より体のだるさが強く出ている
- 思い当たる節がないのに、胃の不快感や下痢がある
- じんましんやかゆみがある
- 心当たりがないのに、手足がむくんでいる
漢方治療には「好転反応」という、漢方の効果が得られる前に一時的に体調不良がひどくなる状態があります。
好転反応があらわれるのは、服用を始めてから数日~1週間以内がほとんどです。
好転反応は「瞑眩(めんげん)」と呼ばれ、江戸時代の吉益東洞は瞑眩がないような薬はむしろ効果が無いと言われていました。
ですから非常に体質に合致する処方で好転反応がおこるので、むしろ瞑眩は起こった方がよく効くわけです。
漢方の「合う」「合わない」の判断はとても難しいため、漢方薬を服用し始めて気がかりな症状が出たら、漢方薬に詳しい専門の医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
以下の生薬が含まれている漢方薬では、合わないときの症状があらわれやすくなります。
生薬の名前と具体的な症状についてみていきましょう。
麻黄(マオウ)は体を温めたり咳を鎮めたりする作用のある生薬です。
含まれる成分のエフェドリンが交感神経を刺激するため、心臓がドキドキする・汗をかく・眠れなくなるなどの症状があらわれることがあります。
甘草(カンゾウ)は、主に炎症を抑える働きがあり、漢方薬の約70%に含まれている生薬です。
主成分のグリチルリチン酸によって、偽アルドステロン症を引き起こすことがあります。
偽アルドステロン症の初期症状には、血圧が上がる・全身がむくむ・力が入らないなどがあります。
附子(ブシ)は冷えや痛みをやわらげる作用がある生薬です。
含まれる成分のアコニチンによって神経がうまく働かなくなり、心臓がドキドキする・のぼせる・口や舌がしびれるなどの症状があらわれることがあります。
大黄(ダイオウ)は、便秘や血の滞りを改善する生薬です。
含まれる成分のセンノシド類によって、下痢や腹痛があらわれることがあります。
また、大黄を含む漢方薬を長期にわたって服用すると、大腸の粘膜が黒く色づく「大腸メラノーシス」を引き起こすため注意しましょう。
山梔子(サンシシ)は、炎症を抑えたり心を落ち着かせたりする働きがある生薬です。
山梔子が含まれる漢方薬を5年以上飲み続けていると「腸間膜静脈硬化症」を引き起こすことがあります。
腸間膜静脈硬化症とは、腸間膜の静脈にカルシウムがたまって血液の流れが悪くなり、腸管に血液が行きわたらなくなる病気です。
自覚症状には腹痛・下痢・吐き気・嘔吐などの消化器症状があります。
漢方薬が合わないときの症状は、皮膚症状・胃腸症状・膀胱炎様症状・肝機能障害・間質性肺炎などさまざまあります。
合わないときの症状を引き起こす主な原因は、成分にアレルギーがある・体質に合わない薬を処方された・複数の漢方薬を服用したの3つです。
体力が落ちている人や、肝臓・腎臓の機能が低下している人など体質によっては、漢方薬で合わないときの症状が起こりやすくなります。
漢方薬を飲み始めてから、じんましん・胃腸症状・全身のだるさ・むくみなどの体調不良があらわれ、1週間以上続くようなら漢方が合わない可能性があるため、服用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。
- 漢方薬が合わないときの症状は、皮膚症状・胃腸症状・膀胱炎様症状・肝機能障害・間質性肺炎などさまざまある
- 主な原因は、成分にアレルギーがある・体質に合わない薬を処方された・複数の漢方薬を服用したの3つがある
- もともとの体質によっては、漢方薬で合わないときの症状が起こりやすい
- 漢方薬を飲み始めてから、気がかりな症状が1週間以上続くようなら服用を中止して医師や薬剤師に相談する
OiTr adsへ広告出稿をご検討いただける企業様は、お気軽に下記窓口へお問い合わせください。
- MAIL:sp@oitr.co.jp
- TEL:03-6778-4254 (平日10時~17時)
- お問い合わせフォームはこちら
上記バナーよりアプリインストールと簡単なユーザー登録で、個室トイレに設置されているOiTr(オイテル)がすぐに無料でお使いいただけます。オイテルの設置場所はこちら