須山 文緒 (すやま ふみお) 医師
プロフィール
京都大学医学部卒業、倉敷中央病院、国立成育医療研究センター、新百合ヶ丘総合病院の勤務を経て、2022年から杉山産婦人科新宿に勤務。
https://www.sugiyama.or.jp/doctor/shinjuku
女性は生理中に腹部の痛みが起こりがちですが、生理とは関係ないタイミングで痛んで「病気かも」と考えたことがあるかもしれません。
身体に異常があるため痛んでいるとしたら、原因をはっきりさせる必要があります。
この記事では、女性の左下腹部のチクチクした痛みで考えられる病気、受診科や検査法をご紹介します。
不安がある方はぜひ参考にしてください。
生理中でもないのに左下腹部にチクチクした痛みを感じる時は、身体のどこかで何らかの異常が起こっている可能性があります。
女性の下腹部には子宮をはじめとする色々な臓器があるため、痛みの理由は色々考えられます。
病気が隠れている場合もあれば、特に異常がなくても痛みが生じることもあるのです。
そのままにせず、原因を突き止めて痛みを改善しましょう。
左下腹部周辺の臓器に病気が発症すると、痛みを感じる可能性があります。
子宮、卵巣などの婦人科系疾患、大腸などの消化器系疾患、腎臓、尿管、膀胱などの泌尿器系疾患が考えられます。
また、身体的な要因以外にも、精神的なストレスによって腹痛が起こることもあるのです。
以下に痛みの原因となっている可能性がある具体的な病気を紹介します。
頻度が多い病気として、まず便秘が挙げられます。
左下腹部に存在するS状結腸は便が停滞しやすく、痛みも起こりやすい傾向にあります。
また、排便異常が数か月に渡って続く過敏性腸症候群でも、左下腹部が痛みやすい方が多いです。
その他、大腸憩室炎といって、消化管の壁が袋状に外側に飛び出ている場所に炎症が起こる病気もあります。
また、急性腸炎などいきなり発症する病気もあります。
大腸がんは自覚症状が乏しいですが、可能性は否定できません。
心配な場合には消化器内科で大腸カメラをしてもらうのがいいでしょう。
女性の場合、子宮や卵巣の異常も痛みの原因となります。
子宮筋腫は30代以上の女性に多い良性疾患です。
ホルモンバランスによって大きさが増しますが、閉経すると小さくなってきます。
特に治療を必要としませんが、できた場所によって左下腹部が痛くなることがあります。
子宮内膜症は、子宮以外の場所に子宮内膜組織ができて発症します。
下腹部の痛みのほか、月経過多、不妊、腰痛や性交痛の症状が起こります。
子宮内膜症が卵巣に起こると「チョコレート嚢胞」と呼ばれる病気となり、稀にがん化の恐れがあるため定期的に診察します。
また、左側の卵巣茎捻転や卵巣破裂でも激しい左下腹部痛が起きます。
頻度は低いですが、子宮がん、卵巣がんも可能性はあります。
また、妊娠の可能性がある場合は子宮外妊娠の可能性もあります。
いずれも放置しておくと命に関わるので、早めの受診が必要です。
腎臓や尿管、膀胱などの泌尿器に結石ができるといきなり腹痛が起こります。
特に左下腹部から腰の周辺が痛くなりやすいのは、尿管結石と膀胱結石です。
尿管結石では激しい痛みや吐き気、血尿、膀胱結石では残尿感や頻尿といった症状がみられる場合もあります。
また、尿路感染症が起こったり腫瘍が発生した場合も、部位によっては左下腹部の痛みが生じます。
また、女性に多い病気の「間質性膀胱」では尿を我慢すると下腹部が痛む慢性的な膀胱炎です。
泌尿器に異常がある場合は、下腹部の痛み以外に残尿感や頻尿など尿に関わる症状が起こるという特徴があります。
腹痛が起こる理由には、臓器の異常のほか自律神経の機能低下が原因として考えられます。
さらに、過敏性腸症候群では消化器系の病気がないのに下腹部痛が起こり、悪化させる可能性があるのは精神的なストレスです。
また、女性に特有の理由としては「骨盤内うっ血症候群」があります。
下腹部の痛みがあるのに炎症や器質的疾患が特定できない状態で、鎮痛剤の効果がみられません。
特に病気がなくても、心身のストレスで左下腹部痛が生じる可能性があるのです。
生理前や生理中に腹痛が起こった経験はありませんか?
生理の時には子宮が収縮するため痛むことが多いですが、どんどん痛みが強くなったり激痛が起こる場合は、先ほど紹介した子宮内膜症や子宮筋腫などによる器質性月経困難症といった病気の可能性があります。
しかし、病気ではない生理現象でも痛みが起こる場合があります。
生理前に左右どちらかに下腹部がチクチクするような痛みを感じた時は、排卵痛が起こっていることがあります。
卵巣から飛び出した卵子が卵管に到達する時の痛みで、同時に排卵出血と呼ばれる僅かな出血が起こることもあります。
毎回の排卵で起こるわけではなく、痛みの程度にも差があります。
排卵が終わると治まり、3日以内には痛みが落ち着くことが多いです。
排卵痛自体は病気ではありませんが、痛みが酷い場合や3日以上続いている時は婦人科を受診しましょう。
生理前や生理中に絞られるような腹痛が起こった時は、理由の1つとして腸の蠕動運動が考えられます。
生理に伴って子宮収縮が起きると、近くに位置している腸も一緒に動くため過剰に蠕動運動してしまうのです。
身体を休めてリラックスしていると落ち着くことが多いですが、耐えられない痛みであれば病院の受診を検討しましょう。
左下腹部の痛みが起こった時、他にどんな症状があるかを参考にするといいでしょう。
不正出血など婦人科系の異常や生理前・生理中に症状がある場合
便秘や下痢などの消化器症状、吐き気、発熱がある場合
血尿や頻尿、残尿感など尿に関わる症状がある場合
迷う場合は、まず内科の受診をお勧めします。
我慢はできるものの長期間痛んでいる、水分・食事・睡眠などが摂れる痛みの場合は、紹介した受診科の見分け方を目安にして診察時間内の受診をしましょう。
激痛がする、吐き気がする、大量に出血する、めまいがする、といった場合は救急外来など早急に受診した方がいい状態です。
「ちょっと気になる」程度の軽い痛みで他に症状がないなら、健診などのタイミングで医師に相談してみましょう。
主に画像診断で異常がある臓器や部位はどこか、血液検査で異常があるかどうかを調べます。
まずは問診があり、その後に医師が必要だと判断した検査が行われます。
受診したらなるべく正確な症状を伝えましょう。
体内で炎症反応が起きていないか調べるため、CRPや白血球の数値を検査します。
特に盲腸(虫垂炎)や憩室炎では高値になります。
また、ホルモンバランスや炎症反応、貧血、肝機能や腎機能の異常がないかを調べる場合もあります。
超音波の反射を画像として映し出し、異常がないか調べます。
身体への負担が少なく、被ばくや痛みもありません。
腹部エコーでは肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓周辺や消化管、婦人科でのエコーは子宮、卵巣の異常がわかります。
大腸内視鏡検査や胃の内視鏡検査では、粘膜をカメラで直接観察します。
炎症やポリープ、潰瘍やがんの発見や診断のために行います。
ポリープなどが見つかれば検査中に処置が可能で、麻酔を使用すれば苦痛もありません。
生理痛以外の左下腹部の痛みの原因は、大腸などの消化器疾患や泌尿器科疾患、そして婦人科疾患など様々なことが考えられます。
腸の蠕動運動や排卵痛などの生理現象でも起こりますが、何らかの異常のサインかも知れません。
病院を受診して原因をはっきりさせ、必要であれば治療することをおすすめします。
お腹の痛みは消化器内科をはじめとした胃腸の症状を思い浮かべることが多いですが、婦人科疾患でも生じます。
内科だけでなく、婦人科の受診も視野に入れてみましょう。
- 左下腹部のチクチクした痛みは、消化器、泌尿器、婦人科などの病気の症状の可能性があります
- 腸の蠕動運動や排卵痛、ストレスなど病気以外でも痛むことがあります
- 痛み以外の症状を目安に、内科や婦人科の受診を検討しましょう
- 原因をはっきりさせ、適切に対処することが大切です
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