佐賀 絵美 医師
プロフィール
杏林大学医学部医学科卒業。横浜市立市民病院、函館中央病院、板橋中央総合病院、東京品川病院等の総合病院勤務を経て2023年7月「二子玉川女性のクリニック」開業。日本産科婦人科学会専門医。
https://www.futakotamagawa-josei.com/
生理前になると身体や心に様々な不調を感じるという女性は多いのではないでしょうか?
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものを「月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)」といいます。
精神的症状として、情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。
PMSは30代が最も症状が重く、精神的な不調が顕著に現れやすいと言われています。
今回は、30代でPMSがひどくなる原因や対処法をご紹介します。
PMSの症状は30代が最も重く感じると言われています。
PMSの原因ははっきりとわかってはいませんが、女性ホルモンの変動が大きく関与していると考えられています。
排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。
この黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられています。
女性ホルモンは初潮を迎える10代に急増し、20代でピークを迎え、50代前後の閉経まで緩やかに減少していきます。
10〜20代は女性ホルモンが急増するのに加え、体の成長・成熟もあるため身体の不調が中心となります。
女性の体が完成し、女性ホルモンが活発な状態である30代は、仕事も大変になることも多い上、結婚や出産などライフステージの変化によるストレスを受けやすく、情緒不安定になったり無気力になったりすることが多いのです。
身体の不調に加えメンタル面も安定しないため、色々な物事がホルモンバランスのせいで上手くいかなくなり、30代でPMSがひどくなったと感じている方が多いのでしょう。
なかには30代でひどくなったPMSが更年期までそのまま続き、更年期症状として50代まで付き合っていかなければならないこともあります。
50歳前後の日常生活に支障をきたすほどの症状は、更年期障害と呼ばれます。
更年期障害も女性ホルモンの変化が原因です。
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10代の終わりから40代前半を「性成熟期」といいます。
性成熟期とは女性ホルモンのエストロゲン分泌が盛んで妊娠・出産に適した時期のことです。
性成熟期には大きく分けて18~37歳の前期と、37~45歳の後期の二つの時期があります。
前期は、月経周期が安定し、妊娠・出産に最も適した時期といえます。
また、妊娠出産においても女性ホルモンの状態は大きく変化します。
妊娠から出産にかけて女性ホルモンの分泌が増え、出産を終えることで女性ホルモンの分泌が急激に減少します。
産後に月経が再会してもしばらくはホルモンバランスが不安定なため、PMSの症状が重くなったと感じる方は多いでしょう。
さらに産後は睡眠不足や育児のあれこれで、今まで感じたことのないような精神的ストレスを受けることもあり、イライラや不安などPMSの症状が多く見られます。
また、出産をしなかった場合でも仕事で責任のある立場を任されたり、家族の問題があったりと、ストレスを感じやすい30代はPMSもひどくなりやすいです。
PMSの症状がどのくらい出るかは、気質と環境要因が深く関係しています。
個人の性格的な面で「几帳面」「真面目」「負けず嫌い」といった気質を持つ人がPMSの症状を重く感じやすいでしょう。
また、以下のような環境の特徴を持つ30代女性は、PMSがひどくなりやすいと言われています。
- ストレスを感じやすい環境で生活している(職場、家庭など)
- カフェインを多く摂取している(コーヒー、エナジードリンクなど)
- 自分または身近な人がタバコを吸う習慣がある
- 月経前にアルコールを摂取することが多い
PMSは個人差があり一概に「これが原因」と言うことはできませんが、生活習慣を見直すことで改善に向かう可能性は大いにあります。
30代になってPMSがひどくなったと感じたときは、これらの特徴に当てはまっていないかをチェックしましょう。
PMSの症状がひどい人の中には、日常生活に支障をきたしてしまう人もいます。
仕事や私生活において、生理のせいで自分らしく過ごせないのは辛いですよね。
ここでは、すぐに実践できる対処法や産婦人科で相談できることをご紹介します。
生活習慣の見直しやリラックス効果のある対処法で、少しでも症状を緩和しましょう。
普段の生活でも、食生活を見直すことでPMSや生理痛が緩和されることがあります。
食事を抜いたり偏食だったりなどの乱れた食生活は、ホルモンバランスを崩す原因にもなります。
特に、炭水化物のとりすぎは血糖値を急上昇させるため、過食やイライラを引き起こしてPMSを悪化と言われています。
生理前になるとジャンクフードや甘いスイーツが食べたくなる人も多いですが、そこで思いのままに食べると、さらなるPMSの症状に悩まされてしまうかも…。
穀物・豆類・芋類を積極的に取り入れ、バランスの良い食事内容を心がけましょう。
また、イライラを抑えるビタミンB6や、カルシウム・マグネシウムを多く含む食材を摂取することでPMSの改善が期待できますよ。
カフェインやアルコールがPMSを悪化させている可能性もあります。
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには神経を興奮させる働きがあり、PMSの精神症状を悪化させる恐れがあります。
カフェインを摂取すると頭が冴えて集中力が上がるため、仕事中にコーヒーを飲んでいる人も多いでしょう。
しかし、1日2杯以上コーヒーを飲む人はPMSが重くなるというデータもあるので要注意です。
また、PMSを感じる生理前の「黄体期」には、黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌され、これらはアルコールの代謝を悪くさせる働きがあります。
生理前にお酒をたくさん飲むと二日酔いになりやすく、PMSも悪化するので控えるのが吉です。
アロマセラピーとは、アロマの香りを嗅いで心を落ち着けストレスを緩和することです。
副交感神経を優位にし、心身ともにリラックスすることでPMSの改善効果も期待できます。
初心者にはラベンダーやゼラニウム、ベルガモット、カモミールの香りがおすすめです。
アロマオイルをお風呂に垂らしたり、ハンカチに垂らして匂いを嗅いだりしましょう。
また、カモミールなどのハーブティーから取り入れることもできます。
ホットのハーブティーは心を落ち着かせるだけでなく身体を芯から温めてくれるので、月経痛やお腹・腰の痛みを和らげる効果もあるでしょう。
アロマセラピーでPMSによる落ち込みや混乱が改善されたという研究結果もありますよ。
PMSを改善するには、自分の月経周期を正しく把握することが重要です。
簡単に生理周期を把握できるスマホアプリもあるので、ぜひダウンロードしてください。
なお、生理周期の乱れは薬で治療することも可能です。
生理不順で悩んでいる人は、そのままにせず早めに受診することがおすすめです。
また、PMSに似た症状で、生理が始まってからイライラや不安、眠気に襲われる「月経困難症」というものがあります。
月経の周期を知っていた方が、生理の3〜10日前に症状を感じるPMSなのか、生理中の月経困難症なのかをきちんと把握しやすいでしょう。
生理周期が乱れたら早めに受診することで、子宮筋腫や子宮内膜症などのPMSや月経トラブルの原因となりうる病気の早期発見にも繋がります。
30代になってひどくなったPMSで悩んでいるなら、産婦人科を受診してみてはいかがでしょうか?
PMSや生理周期の乱れなら、低用量ピルで改善が期待できます。
低用量ピルはホルモンバランスを整えるためPMS改善のほか、生理痛の緩和、月経血量減少、月経不順の改善、生理日の調整、避妊などの効果もあります。
婦人科では適切な治療法や対処法を教えてもらえたり、治療薬を処方してもらえたりします。
体質や疾患などにより低用量ピルを使えない方もいますので、ピル内服前には必ず婦人科医師の診察が必要です。
低用量ピルが使えない場合やピルに抵抗がある方には、漢方薬など他の治療薬での対応もあります。
さらに、気分の落ち込みがひどいときには抗うつ薬などの相談もできるので、自分でも制御できないほどイライラや悲しみに包まれたときは迷わず専門家に頼りましょう。
30代は身体や環境の変化が多く、PMSが最もひどくなる時期と言われています。
PMSとの付き合い方は人それぞれですが、温かくして寝る、ひたすらに我慢したりしてやり過ごすなど、一人で悩んでいる人が多いようです。
しかし、PMSや生理痛は辛くても仕方がないと諦めるものではありません。
生活習慣の見直しや産婦人科で処方された薬の服用で、治療できるものです。
辛いと感じたときには我慢せず、早めに受診されることをおすすめします。
- PMSは30代が最もひどくなる時期
- 妊娠や出産に合わせてホルモンバランスが変化することが大きな原因
- 仕事や私生活のストレスやカフェイン、アルコールはPMSを悪化させる
- 生活習慣の見直しやアロマセラピーなどで諸症状を緩和できる
- 治療薬もあるのでPMSで悩んだら産婦人科で相談するのがおすすめ
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