卵巣の腫れは、年代問わず多くの女性が経験する症状です。
もちろん更年期にも、卵巣の腫れを指摘されるケースがあります。
若い頃はそのまま様子をみるように伝えられることが多い卵巣の腫れですが、更年期に指摘される場合は、放置すると危険なことも。
ここからは、更年期の卵巣の腫れを放置してはいけない理由や原因を解説します。
結論、更年期の卵巣の腫れは、重大な病気のサインの可能性があるため、放置するのは危険と考えましょう。
女性ホルモンの増加によって起こった卵巣の腫れは、月経が来たり女性ホルモンの分泌量が低下したりすると、自然に治まるケースが多いです。
女性ホルモン分泌量が急激に低下する更年期に卵巣が大きく腫れる場合は、自然治癒するだろうと考えずに、できるだけ早めに病院を受診しましょう。
卵巣は「最も腫瘍ができやすい臓器」といわれています。
卵巣の腫れが起こるメカニズムは明確にはなっていませんが、いくつかの原因が関与すると考えられているのだとか。
ここからは、卵巣の腫れが起こる原因についてみていきましょう。
卵巣腫瘍は、大きく以下の2つに分けられます。
- 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ):触ると柔らかい
- 充実性腫瘍(じゅうじつせいしゅよう):触ると固い
卵巣嚢腫は、卵巣腫瘍の約80%を占め、良性のものがほとんどです。
一方、充実性腫瘍には悪性のものもあるため、必ず婦人科で診断を受けましょう。
卵巣の腫れは、ホルモンバランスの影響によることも。
排卵後に黄体が形成されて女性ホルモンが分泌されると、卵巣が腫れたようにみえる黄体嚢胞(おうたいのうほう)がみられることがあります。
妊娠初期には、黄体がhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に刺激されて卵巣が腫れる、ルテイン嚢胞が現れることも。
卵巣の腫れとともに、お腹の張りや腹痛を訴える人もいますよ。
卵巣炎は、卵管の炎症が卵巣まで広がって起こるもの。
性交渉によって感染するクラミジアや、淋菌感染症が原因のケースが多いです。
これらの性感染症は初期症状がないことも多く、気づいた時には症状が進行していて、卵巣をとらなければいけない状態になっていることもあります。
更年期に卵巣が腫れる場合、重大な病気にかかっている可能性があるため、放置せずに婦人科で診断を受けることが大切です。
経過観察になったとしても、定期的に検査を受けましょう。
ここからは、卵巣が腫れる時に考えられる病気を解説します。
卵巣嚢腫とは、卵巣の中に液体や脂肪が溜まってしまう、柔らかい腫瘍のことです。
大きく4つに分けられます。
- チョコレート嚢腫:卵巣にできた子宮内膜症、月経の度に出血した血液が溜まったもの
- 漿液性嚢腫(しょうえきせいのうしゅ):卵巣から分泌される透明の液体(漿液)が溜まったもの
- 粘液性嚢腫(ねんえきせいのうしゅ):ゼラチン状の粘液が溜まったもの、閉経後に多い
- 皮様嚢腫(ひようのうしゅ):歯や髪の毛などの組織が含まれた、どろっとした物質が溜まったもの
ここからは、それぞれの卵巣嚢腫でみられる症状や治療について解説します。
チョコレート嚢腫は、子宮内膜に似た組織が卵巣内で発生・増殖する「子宮内膜症」の1つです。
月経時には卵巣にできた病巣からも出血がみられますが、体外に排出されずに卵巣内でチョコレートのように溜まってしまい、月経痛や排便痛、性交痛を引き起こします。
ほかの部位に発生する子宮内膜症よりも、痛みが強く出ることが特徴です。
チョコレート嚢腫が長期間存在すると、悪性化して卵巣がんになるケースもあります。
チョコレート嚢胞に卵巣がんが合併する確率は、40代で4.1%、50代で21.9%といわれているため、更年期の女性では、卵巣の積極的な摘出手術がおこなわれますよ。
チョコレート嚢胞以外の卵巣嚢腫の場合、不正出血やおりものの変化などの症状が現れないことがほとんどです。
進行して嚢腫のサイズが増大すると、腹痛や腰痛、頻尿、便秘の症状などが生じます。
サイズが7cm以上になると、卵巣の根元が回転してねじれ、下腹部に激痛が走る「茎捻転(けいねんてん)」が起こる可能性があるため、卵巣の摘出が検討されるでしょう。
卵巣がんは40代から発症しやすく、50代〜60代が発症のピークのため、更年期にさしかかった女性は注意すべきがんといえるでしょう。
発症初期は自覚症状が少なく、診断時にはすでに進行しているケースが半数以上と多いです。
卵巣がんの患者の約15%は「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」という、遺伝的要因で乳がんや卵巣がんを発症しやすい家系の人が占めます。
- お腹の張りや痛み
- 頻尿
- 便秘
- 下腹部のしこり
- 食欲不振
こうした症状がある場合は、早期に婦人科を受診しましょう。
年に1度の子宮がん検診とあわせて、内診や超音波検査で卵巣の状態を確認してもらってくださいね。
女性ホルモンの分泌がしっかりおこなわれている若い頃は、生理周期にともなって女性ホルモンの分泌が低下する時期になれば、自然に腫れが引くことも多いため、経過観察するケースが多いです。
一方で、更年期には女性ホルモンの分泌が低下しているため、卵巣の腫れを放置するのは危険です。
卵巣嚢腫や卵巣がんなどが原因で腫れているケースもあり、できるだけ早い診断や治療が必要になります。
年に1度は子宮がん検診や婦人科検診を受け、卵巣の状態を確認してもらいましょう。
- 更年期の卵巣の腫れは、重大な病気のサインの可能性があるため「自然治癒するだろう」と放置しない
- 卵巣の腫れの原因には卵巣腫瘍や女性ホルモン分泌、卵巣炎が考えられる
- チョコレート嚢腫は長期間存在すると、悪性化して卵巣がんになるケースも
- 年に1度の子宮がん検診とあわせて、内診や超音波検査で卵巣の状態を確認してもらおう