笹森 幸文 医師
プロフィール
帝京大学医学部附属病院 産婦人科教授、総合周産期母子医療センター長
非常勤として「千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ」のレディース外来を担当する
https://www.kashiwa-naishikyo.com/kenshin/
生理前におりものが増え、不快感を抱く人はとても多いもの。
また「生理前のおりものが尿漏れみたいに水っぽいのはなぜ?」「黄色いのは病気が隠れているから?」と不安になる人もいるでしょう。
今回は、生理前のおりものの特徴や、妊娠の可能性があるおりものの状態について詳しく解説します。
また、さまざまな病気でみられるおりものの状態も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
おりものとは腟からの分泌物の総称で、子宮や腟からはがれた古い細胞などが混ざっています。
「おりものは下着が汚れる」とネガティブな印象を抱きがちですが、女性なら誰でも出るものなので、受け入れてあげましょう。
ここからは、おりものの役割や健康な時の状態を解説します。
おりものには以下の役割があります。
- 腟の中を清潔に保つ
- 受精を助ける
おりものは腟の中を酸性にして適度に潤すことで、細菌の侵入を防ぎ腟や子宮を守っています。
また、排卵前にはとろみのあるゼリー状に変化し、精子の侵入を助け妊娠しやすくしますよ。
健康な時、おりものの色は白っぽく半透明で、のりのように少し粘り気があります。
下着に付いて乾くと、黄色や褐色に見えるでしょう。
人によっては少し甘酸っぱい匂いがすることも。
一日中、下着を替えなくても問題なければ、正常と判断してよいでしょう。
日頃からおりものの色・匂い・量に気を配ると、体の異常に気づきやすいですよ。
生理前になると、白濁してべたつきがあるおりものが増え、下着につくと黄色っぽく見えます。
また、酸っぱい匂いが強くなりやすいです。
生理が本格的に開始していなくても、子宮内膜が剥がれ始めて少量の出血が混じり、おりものがピンク色になることも。
おりものは女性ホルモンに影響され、生理周期と同じように一定の周期で色・匂い・量などが変化します。
女性ホルモンの分泌量が多い20代~30代では、他の年代よりもおりものの量も多いです。
おりものの量は、卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンの分泌量に、ほぼ比例するといわれています。
ここからは、時期によるおりものの変化をみていきましょう。
生理直後から卵胞期にかけてのおりものは、白やクリーム色をしており、量が少なくさらさらとしています。
生理直後は、腟内に残った経血とおりものが混ざって茶色っぽいことも。
排卵期が近づくにつれて、体内でのエストロゲン分泌量が徐々に増加します。
それにともない、おりものは半透明で粘度のある状態に変化し、量が増えていきます。
エストロゲン分泌量が最大になる排卵期は、おりものの量も最も多くなります。
卵白のように透明、とろみがあるゼリー状でよく伸び、匂いはそれほど強くないのが特徴。
精子を受け入れやすくし、受精の手助けをします。
黄体ホルモン(プロゲステロン)が増える黄体期前半は、おりものの量が減り、白濁してドロッとした状態に変化します。
下着に付くと黄色くなるため、不快感を抱く人も多いです。
また、黄体期後半から生理前にかけては、一度減ったおりものの量が増加します。
結論、生理前におりものが減る時も、妊娠の可能性がないとは言い切れません。
妊娠初期は女性ホルモンの分泌量の増加によって、生理前よりもおりものが増える傾向があります。
また、べたつきのある生理前のおりものとは異なり、白やクリーム色で、さらりとした卵白のような形状をしていることが多いです。
妊娠初期症状である着床出血が起こり、おりものに血が混じることも。
ただし、妊娠初期のおりものには個人差があり、おりものの変化だけで妊娠の有無を判断することは困難です。
生理予定日の約1週間後に妊娠検査薬を使用し、陽性なら婦人科クリニックを受診しましょう。
ここからは、生理前のおりものに異常がある時に疑われる病気や、ほかの症状をみていきましょう。
ただし、いつもと異なるおりものや症状がみられたら、自己判断せずに、すみやかに婦人科を受診してくださいね。
ヨーグルトや酒かす、カッテージチーズのように白濁し、ぽろぽろしているおりものは、腟カンジダ症の典型的な症状です。
外陰部の強いかゆみも生じ、感染による炎症が強いと痛みを感じることも。
生理前後のホルモンバランスの変化や風邪・疲労・ストレスによる抵抗力の低下、デリケートゾーンの蒸れなどで起こります。
魚が腐ったような匂いで、水っぽいおりものが出る場合、細菌性腟症を疑います。
おりものの量が増え、灰色っぽく見えることも。
細菌性腟症の原因は以下のとおりです。
- 性交渉時の雑菌の侵入
- 腟の洗いすぎ
- 乳酸菌に影響を与える抗菌薬の服用
- ストレス
- 免疫力の低下
正常なおりものは乳酸菌で自浄作用が保たれていますが、上記の原因で乳酸菌が減少すると、おりもの内で菌が増殖してしまい、細菌性腟症を発症します。
黄色や黄緑色の泡状で悪臭のあるおりものが増える時は、トリコモナス腟炎かもしれません。
トリコモナス腟炎とは、主に性交渉で感染する性感染症で、おりものの異常に加えて、外陰部のかゆみや痛み、排尿痛、性交痛があらわれることもあり、自然治癒することはありません。
性感染症である淋菌感染症では、おりものが増えたり、膿のように濃い黄緑色になったりします。
また、おりものからの悪臭や不正出血、下腹部痛、排尿時痛などの症状もみられるでしょう。
放置すると、子宮内膜炎や卵管炎に発展し、不妊の原因になることも。
黄緑色や黄色になったり、水っぽいおりものが大量に出たりする場合は、性器クラミジア感染症を疑いましょう。
症状が軽度のことが多く、感染に気付かずに放置してしまうおそれがあります。
性交渉がある人は、定期的に性感染症検査を受けるのがおすすめです。
生理前におりものが増えると、下着が汚れたり匂いが気になったりして、不快感を抱きがちです。
ここからは、おりものが気になる時の対処法を解説します。
下着の汚れが気になる場合、おりものシートを使用しましょう。
常に付けたままだと、蒸れてかぶれたり雑菌が繁殖しやすかったりするため、1日に3回~4回は交換してください。
デリケートゾーンは、専用ソープを使用して優しく洗いましょう。
おりものや匂いが気になる時は、ごしごしと念入りに洗ってしまいがちです。
しかし、そのせいで腟の自浄作用を妨げ、逆におりものが増えたり、肌荒れやかゆみが起こったりするおそれがあります。
また、ボディソープは洗浄力が強く、おりものの自浄作用が働かなくなるため、使用は控えましょう。
おりものがいつもと違う場合、疲れている可能性があると考えて、しっかり休息をとりましょう。
不規則な生活やストレスなどで卵巣機能が低下すると、腟内の自浄作用が弱まり、炎症が起きてしまうことも。
良質な睡眠やバランスのよい食事を心がけてくださいね。
生理前のおりものは白濁し、量が増えてべたつくため、不快に感じる人が多いです。
体の異常にいち早く気づくためには、月経周期にともなうおりものの変化や、日頃の色・匂い・量を知っておきましょう。
妊娠初期におりものの変化がみられることもありますが、おりものだけで妊娠の可能性を判断するのは難しいため、妊娠検査薬を使用してください。
生理前のおりものに、尿漏れみたいに水っぽい・臭いなどの異常がみられたら、すぐに婦人科で原因を特定し治療をおこないましょう。
おりものシートを活用する際は、雑菌の繁殖を防ぐために1日3回~4回は交換してくださいね。
- おりものには自浄作用や受精を助ける役割がある
- おりものの量は月経周期によって変化し、生理前は増える
- 妊娠初期にはおりものが増加するが、生理前におりものが少なくなっても、妊娠の可能性を否定しきれない
- おりものに異常がある時は、すぐに婦人科を受診しよう
- 生理前のおりものが気になる時にはおりものシートがおすすめだが、こまめな交換が必要
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