【医師監修】月経困難症とはどういう症状がある?原因や治療方法など詳しく解説

この記事の監修医師

須山 文緒 (すやま ふみお) 医師
杉山産婦人科 新宿/産婦人科

プロフィール
京都大学医学部卒業、倉敷中央病院、国立成育医療研究センター、新百合ヶ丘総合病院の勤務を経て、2022年から杉山産婦人科新宿に勤務。

※この記事は全文、須山医師監修のコンテンツです。

生理のたびに重い生理痛があると「病気なのかもしれない」と悩みますよね。

一方で「生理痛は病気じゃないけれど、病院に行ってもいいの?」と受診をためらうかもしれません。

しかし、重い生理痛は月経困難症という病気と診断され、治療の対象になるのです。

今回は、月経困難症の定義や検査、治療について解説します。

強い生理痛で悩んでいるなら、参考にしてみてくださいね。

月経困難症とは?定義と種類を知ろう

月経困難症とは、月経直前から月経期間中に起こる病的な症状です。

月経痛だけでなく、頭痛や吐き気、下痢、気分の落ち込みなどのさまざまな症状も含まれます。

月経困難症は、痛みの原因となる病気がない機能性月経困難症と、病気が痛みの原因となる器質性月経困難症に分類されます。

ここからは、それぞれの特徴をみていきましょう。

機能性月経困難症

機能性月経困難症は、原発性月経困難症とも呼ばれます。

子宮や卵巣をはじめとする骨盤内の臓器に、痛みを引き起こす病気が見当たらない月経困難症です。

初経から2~3年後に始まることが多く、思春期から20代前半の女性に多くみられます。

年齢が上がるとともに、月経困難症の症状は改善することもあります。

生理1~2日目頃の出血量が多いときに症状が出やすく、強い痛みは1~2日で収まることが多いです。

器質性月経困難症

器質性月経困難症は、続発性月経困難症とも呼ばれます。

骨盤内に痛みの原因となる病気をともなう月経困難症です。

器質性月経困難症は20~40代に多くみられますが、近年は10代でも痛みの原因となる病気を抱える女性が増えています。

月経の4~5日前から月経後まで鈍痛が続くため、長期間つらい症状に悩まされるでしょう。

月経困難症の原因

月経困難症の原因は、機能性月経困難症と器質性月経困難症で異なります。

ここからは、それぞれの原因をみていきましょう。

機能性月経困難症の原因

機能性月経困難症の原因は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンの過剰分泌です。

プロスタグランジンは子宮を収縮させて、生理時に剥がれた子宮内膜を月経血として排出する役割があります。

しかし、分泌量が多すぎると過度に子宮を収縮させるため、強い痛みを感じるのです。

また、若い頃や出産経験がない場合は膣と子宮をつなぐ子宮口が狭くて硬いため、スムーズに月経血を送り出せず痛みが起きることも。

他にも、心理的なストレスや運動不足、血行不良も、強い生理痛の原因になります。

器質性月経困難症の原因

器質性月経困難症の原因となる病気はさまざまです。

将来不妊の原因になりうる病気が多いため、強い痛みを感じるときは病気の可能性を疑い、早めに受診し治療しましょう。

ここからは、原因となる主な病気について詳しく解説します。

子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の内側ではなく、卵巣や卵管などにできてしまう病気です。

20~40代の約10%に発症するといわれていますよ。

女性の体では、女性ホルモンの影響を受けて子宮内膜が増殖し、月経を迎えると出血が起こります。

子宮内膜症でも月経に合わせて出血が起こりますが、血を排泄できません。

そうして卵巣や卵管にたまった血液が、炎症や周囲の組織との癒着を引き起こし、強い痛みを感じるのです。

また、月経時に子宮以外に子宮内膜症がある部位からもプロスタグランジンが分泌されるため、生理痛が強まります。

炎症や他の組織への癒着によって、月経時以外にも下腹部痛や腰痛、排便痛、性交痛などが現れることも。

子宮腺筋症

子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮筋層内にできる病気です。

好発年齢は35~50歳で、約20%の女性が持っているといわれます。

子宮腺筋症は出産経験のある人に多い病気で、子宮内膜症や子宮筋腫を併発することも。

過多月経や月経痛の他に、生理の直前から激しい骨盤痛が断続的に起こります。

また、過多月経による貧血や生理周期以外の骨盤痛に悩むこともありますよ。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮筋層にできる良性の腫瘍です。

成人女性の20~30%にみられ、小さいものなら自覚症状が出ないことも。

筋腫が大きくなったり、場所が悪かったりすると過多月経が現れ、レバー状の血の塊が混じって出てくるようになります。

筋腫により腫大した子宮は、月経時にうまく収縮できず、強い月経痛が現れるのです。

また、筋腫が巨大化すると下腹部痛や腰痛、排尿障害、便秘などが現れ、筋腫のタイプによっては不妊につながることも。

月経困難症の検査

月経困難症を疑うときは、婦人科を受診しましょう。

婦人科では、次の流れで検査が行われることが多いです。

  • 問診で痛みの程度やタイミング、初経からこれまでの痛みの経過、日常生活への影響などを聞き取る
  • 触診や超音波検査で子宮や卵巣の病気の有無を調べる
  • 必要であれば血液検査で貧血やホルモンの状態などを調べることもある

器質性月経困難症が疑われるときは、病気の診断のためにMRIやX腺を使った画像検査が行われることも。

また、性交経験がある場合は、性感染症の検査も検討されます。

月経困難症の治療

月経困難症の治療法には、さまざまな選択肢があります。

ここからは、具体的な治療内容をみていきましょう。

また、自宅でできるセルフケアの方法も紹介するので、参考にしてくださいね。

器質性月経困難症の場合は原因疾患を治療する

月経困難症の原因となる病気は、不妊の原因にもなるものも多いため、今は妊娠の希望がなくとも将来妊娠できるように、すみやかに治療しましょう。

治療法は病気によって異なりますが、多くはホルモン療法や手術が選択されます。

非ステロイド性鎮痛薬

機能性・器質性月経困難症のどちらでも、ロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤が使用されます。

鎮痛薬は痛みが強くなってから服用しても、効果が少ないことに注意しましょう。

月経開始予定日から、1日3回同じ時間に服用するのがおすすめです。

鎮痛薬の過剰服用では、胃潰瘍や薬物乱用性頭痛が出る危険性があります。

用法用量を守り、鎮痛薬を服用しても症状が緩和されない場合は、他の治療を検討しましょう。

ホルモン療法

月経困難症では、低用量ピル、黄体ホルモン剤といったホルモン療法が多く採用されます。

どれも子宮内膜が厚くなるのを防ぎ、プロスタグランジンの分泌量を抑えるため、痛みを緩和させますよ。

ここからは、具体的な薬についてみていきましょう。

低用量ピル

月経困難症で使われる低用量ピルは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを低用量配合した薬(LEP)です。

基本的に低用量経口避妊薬(OC)と同じ成分が使われていますが、避妊目的の処方では自費診療になる一方で、月経困難症では保険が適用されます。

低用量ピルは、生理痛だけでなく生理不順やPMSにも効果的です。

また、月経血の量も減るため、貧血も緩和されることもあります。

主にヤーズやヤーズフレックス、ルナベル、フリウェルなどが用いられます。

黄体ホルモン剤

黄体ホルモン剤であるジエノゲストは排卵を抑えるため、月経が起こりにくくなり、痛みが緩和されます。

また、子宮内黄体ホルモン放出システムのミレーナは、5年間子宮内で合成プロゲステロンを持続的に放出し、子宮内膜を薄く保つ薬です。

月経困難症なら、どちらも保険が適用されますよ。

喫煙習慣や肥満などで血栓症のリスクが高く、低用量ピルが服用できない場合に処方されます。

漢方薬

漢方薬の中にも、生理痛を和らげるものがあります。

漢方薬は主に機能性月経困難症に用いられますが、器質性月経困難症の場合は病気の治療と並行して服用することも。

体質や症状に合う漢方を服用すれば、痛みが緩和しますよ。

自宅でできる対処法

月経が始まる前から、次に紹介する方法を取り入れましょう。

  • 月経時にお腹や腰、足元を温める
  • 十分な栄養摂取や睡眠を心がける
  • ストレッチや軽い運動を取り入れる
  • リラックスできる服装や環境を整える

月経困難症による痛みは、冷えやストレスで悪化するため、日常的に体を暖めてリラックスできるように心がけてくださいね。

月経困難症かも?病院に行く目安

痛みが強く仕事や勉強に支障が出ている場合や、月経血の量が増加していたり、月経痛が年々強まっていたりする場合は、迷わず婦人科を受診しましょう。

月経困難症を「ただの生理痛だから病気じゃない」と自己判断して放置すると、病気の発見が遅れてしまいます。

生理痛の重さレベルをセルフチェックし、受診の目安にするのもおすすめですよ。

重い生理痛は月経困難症のサイン!日常生活に支障が出たら婦人科を受診し治療を受けよう

日常生活に支障が出るほどの重い生理痛は、月経困難症の可能性が高いです。

月経困難症の原因となる病気がないケースもありますが、不妊につながる重大な病気が隠れているかもしれません。

月経困難症と診断されれば、病気の治療に加えて、鎮痛薬やホルモン療法、漢方薬、セルフケアなどで症状の緩和を目指します。

「ただの生理痛だから」と自己判断せず、痛みの重さレベルをセルフチェックし、受診の目安にしてくださいね。

この記事のまとめ
  • 月経困難症は、月経直前から月経期間中に起こる病的な症状で、生理痛以外にも下痢や頭痛、吐き気などの不快な症状が含まれる
  • 月経困難症の原因になる病気を放置すると、妊娠しにくい体になることもあるので、すぐに治療しよう
  • 痛みの緩和には、鎮痛剤や低用量ピルなどのホルモン療法、漢方薬が用いられる
  • 生理痛の重さレベルをセルフチェックし、日常生活に支障があるなら早めに受診しよう

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