女性の貧血の原因とは?対処法や症状が続くとどうなるかも解説

貧血に悩まされている方は多いのではないでしょうか。

女性に貧血が多い理由はきちんと存在し、実は生涯を通じて切っても切れない関係にあると言えるのです。

この記事では女性の貧血の原因や対処法についてご紹介します。

病気が隠れている可能性もあるため「体質だから」と放置せず、改善のためにできることからはじめてみましょう。

貧血とは

貧血とは、血液中の赤血球に存在するタンパク質の一種である「ヘモグロビン」が減少した状態のことです。

血液そのものの量は減っていませんが、赤血球の質や量が低下しています。

血液検査で血液中の赤血球数や密度、ヘモグロビンの量を調べ、成人女性では12g/dL未満(80歳以上では11g/dL未満)で貧血と診断されます。

令和元年に行われた厚生労働省の調査によると、日本人の女性のうち10人に1人以上が貧血状態です。

日本人女性には特に多いとも言われており、かなり身近な状態と言えるでしょう。

これまでに立ちくらみやめまいを経験したことがある方も多いのではないでしょうか。

参考記事:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告

貧血で起こる症状

ヘモグロビンは、身体の組織に酸素を運ぶ役割を持っています。

貧血でヘモグロビンが不足すると身体に十分な酸素が行き渡らず、身体の色々な場所で不調が起こるのです。

  • 動悸、息切れ
  • めまい
  • 顔面蒼白
  • 耳鳴り
  • 集中力低下
  • 疲労感、倦怠感
  • 口内炎
  • 味覚異常
  • 耳鳴り
  • 爪が割れやすい
  • 氷食症(氷を食べたくなる)
  • むずむず脚症候群(就寝時に脚がむずむずして寝付けない)

このように、貧血症状は多岐にわたります。

「何となく調子が悪い」と思っていたら実は貧血だった…という可能性もあるでしょう。

貧血が続くとどうなる?

貧血が続いて体が慣れてしまうと、普通であれば立っているのが辛いほどの貧血であっても自覚症状が乏しくなってしまいます。

貧血状態が続くと心臓に過剰な負担がかかり、心筋梗塞など重大な心疾患につながるリスクがあります。

また、貧血の原因は様々ですが、まれに悪性疾患が原因のことがあります。

特に消化管から出血している場合は気がつきにくく、ひどい貧血が進行がんのサインだった、という可能性もあります。

健康診断などで貧血を指摘されたら、原因を調べるために医療機関を受診しましょう。

女性の貧血の原因とは

女性の貧血の原因は、ライフステージによって様々です。

順番にみていきましょう。

  • 思春期(10代):身体が成長し、月経がはじまると鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。
  • 性成熟期(20〜40代):過多月経で出血の量が多い場合や、婦人科や消化器の病気で出血が続くと貧血の原因となります。
  • 妊娠・授乳期:授乳などで赤ちゃんに栄養を与えるため母体が栄養不足になり、貧血の原因となります。
  • 更年期(40代半ば〜50台前半頃):婦人科の病気や更年期障害によるホルモンバランスの変動で貧血が起こりやすくなります。
  • 更年期以降:がんや消化器系の病気、造血機能の衰え、食事量の低下が貧血の原因となります。

このように、女性は生涯を通じて貧血のリスクが高いと言えます。

鉄欠乏性貧血

ヘモグロビンを合成するための材料となる鉄分不足で起こる貧血です。

体内の鉄分のうち6〜7割は血液に含まれるヘモグロビンとして、残りの2〜3割は肝臓や脾臓、骨髄などに貯蔵鉄として存在しています。

血液中の鉄分が不足すると、まず貯蔵鉄から補われて潜在性鉄欠乏と呼ばれる状態になります。

貯蔵鉄からも補充できなくなると血液中の鉄分が不足するため貧血となるのです。

成人女性は毎月約40mgの鉄を失っていると言われています。

貧血の自覚症状がある人も無い人も、普段から鉄分摂取を意識した食事を心がけたいところです。

婦人科系の病気が原因の貧血

病気でなくても更年期障害やホルモンバランスの変化でも貧血になりやすい傾向にある女性ですが、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などで月経量が増え、出血性貧血を起こすことがあります。

その他の病気が原因の貧血

胃や十二指腸潰瘍などで臓器から出血と鉄の吸収阻害の併発が起こったり、頻発月経で月経の回数が多く、出血回数が増えたりすると出血性貧血が起こりやすくなります。

また、再生不良性貧血や溶血性貧血、腎性貧血、鉄芽球性貧血、巨赤芽球性貧血といった血液疾患によって正常に血液が作られずに起こる貧血も。

貧血の原因は1つではなく、複数の疾患が合併して起こるケースもあります。

まれに胃がんや大腸がん、白血病などの悪性疾患が原因となることもあるため、貧血症状が続くようなら放置するべきではありません。

栄養不足による貧血

鉄分以外の栄養素が不足しても、血液が作られにくくなるため貧血を起こしやすくなります。

鉄分以外には亜鉛、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸などが必要です。

  • 歳を重ねて食が細くなり、絶対的な摂取量が足りない
  • ストレスによって食事から鉄分が吸収できない
  • 妊娠・授乳期である

などの理由で、女性は栄養不足になりやすい傾向があります。

貧血の原因となる女性特有の病気とは

普通の月経以外に、子宮や卵巣に関わる婦人科の病気が原因で出血量が増えて貧血状態になることがあります。

多くは良性のものですが、悪性腫瘍の可能性も否定できません。

放置しないで一度病院を受診し、原因をはっきりさせましょう。

子宮筋腫

子宮の筋肉組織が発達・増殖して出来る腫瘤です。

多くは良性で、女性の3割にあるとも言われています。

筋腫ができる場所によって症状には差があり、特に粘膜下や子宮頸部に出来た場合は月経過多になりやすい傾向にあります。

これらの場所に筋腫が発生すると、大きさに関わらず出血量が多くなりやすいです。

貧血症状がひどい場合や腹部膨満感や不妊の原因となっているものは、ホルモン治療や手術によって治療します。

子宮腺筋症

本来なら子宮内部にできる内膜組織が子宮平滑筋(子宮の外)にできてしまう病気です。

排卵後、妊娠が成立しなければ子宮内膜組織がはがれ落ちて体外に排出されるのが一般的ですが、子宮平滑筋の中に出来た内膜組織は排出できません。

そのため月経周期のたびに老廃物として蓄積され、子宮が肥大して固くなるために非常に強い月経痛や月経過多の原因となります。

ピルやホルモン製剤による月経コントロールによる治療か、根治治療を希望する場合は子宮摘出します。

子宮内膜増殖症

子宮内膜が異常増殖して過剰に分厚くなってしまう病気です。

肥満、多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病でリスクが高いと言われています。

月経は子宮内膜がはがれ落ちて起こるため、内膜が厚い分出量も増えることになります。

月経過多や不正出血による貧血の原因となり、子宮体癌の前触れとして生じる可能性もあるため、貧血や不正出血が長期間続いている時は一度病院を受診しましょう。

前癌病変でなければ、原則としてホルモン治療をして症状の改善を目指します。

子宮体がん・子宮頸がん

子宮内膜や頸部に発生する悪性腫瘍で、若年者の発症率も低くありません。

腫瘍から慢性的に出血したり、月経異常が起こったりして貧血になる、もしくは進行がんで食欲低下による栄養不足となって鉄欠乏性貧血が起こる、といった可能性があります。

初期の場合は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると不正出血などがみられる場合があります。

不正出血や貧血の状態が長く続いている場合は、婦人科を受診して検査を受けましょう。

貧血になったらどうすればいい?自分でできる対処法は?

「自分は貧血に当てはまる」という方は、日常生活に取り入れやすい対処法を取り入れてみましょう。

基本的にはヘモグロビンの量を増やすべく鉄分を摂り、吸収しやすい状態を心がけることです。

鉄分を摂取する

意識的に鉄分の摂取量を増やすため、日々の食事に以下の食品を取り入れてみてください。

  • レバー
  • 大豆、大豆製品
  • しじみ、あさり
  • ひじきなど海藻類
  • かつお、まぐろなど赤身魚
  • ほうれん草、切り干し大根

1日10.5mgの鉄分摂取が推奨されています。

体内で吸収されやすいヘム鉄が含まれる魚やレバーを積極的に食べ、食事から十分な量を摂取できない場合はサプリメントも活用しましょう。

また、鉄分を吸収しやすくするためにビタミンC、血液を造るためにビタミンB12、葉酸、タンパク質なども重要です。

鉄分に限らず、バランス良い食事を心がけましょう。

生活習慣を改善する

鉄分は眠っている間に腸から吸収されます。

そのため、睡眠不足になると鉄の吸収を妨げられて貧血の原因の1つになります。

貧血になると睡眠にも障害が出て悪循環が起こるため、食生活を見直して鉄分摂取を心がけるほか、しっかり睡眠時間を確保することも大切です。

規則正しい生活習慣を心がけることが貧血対策につながります。

ストレスをためない

ストレスによって胃腸の働きが低下し、鉄分の吸収率が下がってしまいます。

せっかく鉄分の多い食事をしても吸収できなければ効果が半減です。

リラックスしながら食事をすると胃酸の分泌が良くなり、鉄分を吸収しやすくなります。

ストレスフルな世の中ではありますが、自分のストレス発散の手段をいくつか用意しておきましょう。

貧血は何科で治療する?

総合病院など、多くの診療科を有する病院の「血液内科」は血液疾患の専門ですが、受診に紹介状が必要な可能性もあります。

そんな時は、最初にかかりつけの内科に相談するのがいいでしょう。

血液検査など、貧血かどうかを調べる検査は可能ですし、必要なら大きな病院に紹介状をかいてもらえます。

生理周期と関係している貧血の場合は婦人科の受診でも大丈夫です。

女性は貧血になりやすい!原因を知って対策し必要なら受診しよう

貧血の原因は年代によって様々ですが、女性は一生を通じて貧血になりやすいと言えます。

「貧血」と言ったら鉄分不足による鉄欠乏性貧血が思い浮かびやすいかもしれません。

しかし、その他に婦人科疾患や消化器疾患、場合によっては悪性疾患が原因の可能性もあります。

いずれにしても、放置しておくと健康に重大な影響を与える恐れがあります。

貧血症状がある方は、日頃からの鉄分摂取を心がけるだけでなく内科もしくは婦人科などの受診を検討するのがおすすめです。

原因の疾患が判明した場合は適切な治療をして、貧血の改善を目指しましょう。

この記事のまとめ
  • 女性は生理もあり、ライフステージを通じて貧血になりやすいと言えます
  • 鉄分を多く含む食事を日常的に心がけましょう
  • 貧血は鉄分不足のほか、婦人科疾患や消化器疾患が原因の可能性があります
  • 慢性的な貧血症状が続く場合、一度医療機関を受診してみましょう

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