ジェンダーギャップ指数とは?日本が低い理由や問題点をわかりやすく解説

「ジェンダーギャップ指数」という、男女格差を指数で示したものがあります。

ジェンダーギャップにおいて、世界から見た日本はどのような立ち位置にあるのでしょうか。

ジェンダーギャップ指数の定義とともに、2023年の日本の順位や課題を解説します。

ジェンダーギャップ指数とは

はじめに「ジェンダーギャップ指数 (The Global Gender Gap Index) 」について定義や評価基準を確認していきましょう。

ジェンダーギャップ指数の定義

ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラムが公表している男女格差の度合いを示す指数です。

男女格差のない社会を実現するために男女格差を測定する指標を定め、算出した数値をもとにした国別順位を、2006年以降毎年公表しています。

ジェンダーギャップ指数の評価基準

ジェンダーギャップ指数の計算方法は、基本的には「女性÷男性」。

男女格差がない場合はスコアが1.000になり、格差が大きくなるほど0.000に近づくので、1.000に近いスコアほど良いとされます。

男女格差について4分野14項目で測定され、それぞれの項目について基本の計算方法で数値化します。

数値化したスコアをまとめたものがその国の指数となり、スコアの高い順に順位を決定。

ジェンダーギャップ指数の評価基準となる4分野14項目とは、以下の内容です。

経済参画分野

  • 労働参加率の男女比
  • 同一労働における賃金の男女格差
  • 推定勤労所得の男女比
  • 管理的職業従事者の男女比
  • 専門・技術者の男女比

教育分野

  • 識字率
  • 初等教育就学率
  • 中等教育就学率
  • 高等教育就学率の男女比

保健分野

  • 出生時性比
  • 平均寿命の男女比

政治参画分野

  • 国会議員の男女比
  • 閣僚の男女比
  • 最近50年における行政府の長の在任年数の男女比

ジェンダー開発指数とジェンダー不平等指数

ジェンダーギャップ指数のほかにも、国連開発計画 (UNDP) が公表している男女格差を表す指標「ジェンダー開発指数」と「ジェンダー不平等指数」があります。

ジェンダー開発指数とは、健康・知識・生活の質における男女格差を測定した数値のこと。

2022年9月8日発表時、日本の順位は世界191か国中76位でした。

ジェンダー不平等指数は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)・エンパワーメント・労働市場への参加といった観点から、男女間の不平等による機会や可能性の損失を表す指標のこと。

2022年9月8日発表時、日本の順位は世界191か国中22位でした。

2023年日本のジェンダーギャップ指数と順位

ジェンダーギャップ指数における、世界から見た日本の立ち位置はどのあたりなのでしょうか。

ここからは、2023年に発表されたジェンダーギャップ指数の順位と内容について、詳しく見ていきましょう。

日本は146か国中125位

2023年6月20日に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数によると、日本は146か国中125位でした。

参加国の数に変動があるため一概には言えませんが、125位は過去最低順位。

スコアが上昇した分野はなく、東アジア・太平洋地域においては最下位のままで、深刻な状況が続いていると言えます。

(出典:世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ・レポート 2023」)

各分野別の指数と順位

ここからは、政治・経済・教育・健康それぞれの指数について、詳しく見ていきましょう。

ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2023年

(出典:内閣府男女共同参画局公式サイト「男女共同参画に関する国際的な指数」)

上記の表でもわかるように、4分野のうち教育分野は0.997、保健(健康)分野は0.973と世界トップクラスの高スコアであるのに対し、経済参画分野と政治参画分野はかなり低いスコアです。

分野別の順位は、経済参画分野123位、教育分野47位、保健(健康)分野59位、政治参画分野138位。

特に政治参画分野は0.057とかなり低いスコアで、総合的な順位を下げる要因となっています。

一方で唯一1.000を上回るスコアだったのが、保健(健康)分野の平均(健康)寿命。

出生時の性比率とともに高スコアで、分野別の平均スコアを上回っています。

各分野別の前年比

各分野別に前年と比較するとスコアが上昇している分野はなく、保健(健康)分野がかろうじて横ばい、経済参画・教育・政治参画分野は下がっていました。

教育分野については、2022年は1.000と完全平等のスコアでしたが、2023年に高等教育の項目が反映された影響でスコアが0.997に下がっています。

ジェンダーギャップ指数1位はアイスランド

ジェンダーギャップ指数の世界1位はアイスランドで、12年間もトップの座を守り続けています。

また、2023年の発表によると2位ノルウェー、3位フィンランドと北欧諸国が上位を占める結果に。

では、世界のトップを守り続けているアイスランドでは、ジェンダーギャップに関してどのような取り組みをしているのでしょうか。

法律で義務化された同一労働同一賃金

アイスランドでは2018年、男女間で異なる賃金を支払うと違法になるという世界初の法律が制定されています。

2020年以降は、従業員25名以上の企業に同一労働の男女に同一賃金の支払いと証明書の提出を義務付け、証明できない場合は高額の罰金を科すという厳しい内容。

法整備だけでなく、実態も確認できる仕組みをつくることにより、男女格差をなくしています。

世界トップレベルの育児休暇取得率

アイスランドの育児休暇は、父親母親それぞれ3か月ずつ取得できる制度です。

育児休暇の取得は義務付けられているため、アイスランドの父親の育児休暇取得率は約9割と高水準を達成。

対して日本の父親の育児休暇取得率は、約1割と言われています。

この男女格差は、経済分野における管理職比率のスコアが0.148と低いことにつながっていると言えるでしょう。

日本で女性の管理職の割合が少ないのは、このような要因も影響していると考えられます。

全教育課程で男女平等の授業を義務化

2008年よりアイスランドでは、すべての教育課程で男女平等についての授業を義務化しています。

男女で異なる内容の教育をすることや、性差別に関する教材の使用も禁止。

子どもの頃からの教育で男女平等について学んでいるため、社会全体として女性の活躍や昇進を阻むような文化の発生を防ぐことにつながっています。

日本のジェンダーギャップ指数が低い理由と課題

世界的に見て日本のジェンダーギャップ指数は極めて低いと言えますが、その理由や課題はどのようなところにあるのでしょうか。

経済参画分野

日本の女性管理職の割合が低い原因には、出産や育児で長期間仕事を離れてキャリアがストップしてしまうことが挙げられます。

育児休暇の制度が整っていないことや、男性の育児休暇取得率が低いことが、女性管理職が生まれにくい状況につながっていると言えるでしょう。

また、実績や能力があっても『女性』という理由で、見えない壁に阻まれて昇進できない「ガラスの天井」と呼ばれる風土も根強く残っているようです。

政治参画分野

政治参画分野のスコアが低い原因は、女性の政治参加が少ないことです。

国会議員の女性の割合は9.9%、女性閣僚の比率も10%程度とかなり低く、国政だけでなく地方議会においても女性の割合が低いことが指摘されています。

地方議会で女性の割合が20%を超えているのはわずかで、ほとんどの地方では20%を下回っているのが現状。

今後、女性議員や女性閣僚が増えない限り、政治参画分野のスコア上昇は見込めないでしょう。

教育分野

教育分野において日本は高いスコアを維持していますが、2023年から反映された大学・大学院の在学率を表す高等教育という項目が増えたことにより、スコアを落としています。

これは男女の大学進学率に差があるためですが、特に理系学部への女性の進学率が低いことも理由のひとつです。

ジェンダーギャップ指数が低いことによる3つの問題点

ジェンダーギャップ指数の低さが懸念されるのは、さまざまな問題が起こる恐れがあるためです。

ここからは、主に考えられる3つの問題点を見ていきましょう。

雇用格差

ジェンダーギャップ指数が低いと、雇用に関して男女格差が生まれます。

結婚・出産・育児といったライフイベントで、女性ばかりに負担がかかり、キャリアとの両立が困難になることも。

また、退職して再就職となると、非正規雇用になるケースも多いようです。

暴力・虐待被害

男女の格差が大きい地域では、暴力や虐待の被害が問題になっています。

肉体的な暴力や虐待だけでなく、性的・精神的・経済的な暴力や虐待も問題になっており、発展途上国になるほど女性の被害は深刻です。

賃金格差

雇用格差にもあるように、男女における正規雇用の割合は賃金格差にも直結します。

出産や育児をきっかけに女性の負担が増え、正規雇用の職を手放す女性が多いのも日本の実情です。

ジェンダーギャップ指数上昇のための取り組み

ジェンダーギャップ指数上昇のために、政府や企業ではさまざまな取り組みをしています。

政府の取り組み

男性の育児休暇取得率が低いことから、2022年10月より「産後パパ育休」の制度を新設。

従来の子どもが1歳になるまでに取得できる育児休暇とは別に、生後8週間までの期間に最大4週間取得できる制度です。

政府の取り組みのほか、鳥取県の「輝く女性活躍パワーアップ企業登録制度」や埼玉県の「メンター共有制度」など、地方自治体独自の支援制度や取り組みも進んでいます。

企業の取り組み

大手繊維メーカーの「帝人」では、2020年に従業員の賃金格差について調査しました。

調査データでは、国内では同じ職位であれば賃金格差がほとんどないという結果だった一方で、全体では男女格差が生まれているという結果に。

その原因は、育児休暇を取得した女性の昇進が遅れて管理職の女性比率が低いことです。

そこで帝人では、育児休暇中でも昇進試験の受験資格をキープできるよう社内規定の見直しをしています。

また、業務改善サービスやクラウドベースのグループウェアを取り扱う「サイボウズ」では、2005年より育児休暇の取得期間を男女問わず最大6年間としました。

さらに、ライフイベントに合わせて働き方を選べる選択型人事制度や在宅勤務制度の導入で、時間や場所の制限を越えて働ける環境を整備しています。

政府・企業・個人の取り組み次第で日本のジェンダーギャップ指数は上昇するかも

日本のジェンダーギャップ指数は146か国中125位と、世界的に見てもかなり後れを取っていることがわかります。

しかし分野別に見ると、日本は教育を受ける環境や医療の充実により教育分野や保健分野でのスコアは高いと言えます。

一方、出産や育児などで女性がキャリアアップしづらい・政治参加が少ないなどの要因もあり、経済参画分野と政治参画分野に課題を抱えていることは顕著です。

今の日本にはまだ伸びしろがある状態と言えるため、今後の取り組み次第でジェンダーギャップ指数は上昇する可能性を秘めています。

この記事のまとめ
  • ジェンダーギャップ指数とは男女格差を表す数値
  • 日本のジェンダーギャップ指数順位は146か国中125位
  • 教育分野のジェンダーギャップ指数は高スコア
  • 日本の課題は政治参画分野と経済参画分野
  • 政府や企業、個人の取り組み次第でジェンダーギャップ指数は上昇する可能性も

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