日本はジェンダーニュートラルな社会に向けた取り組みが、他の先進国よりも後れていると言われています。
今回はジェンダーニュートラルの意味や、世界的に行われている取り組み日本が抱える課題について解説します。
性別にとらわれない社会を実現させるために、できることを一緒に見ていきましょう。
まずは、ジェンダーニュートラルの意味や広まった背景、関連用語を解説していきます。
ジェンダーニュートラルは、男女の性差にとらわれない中立的な考え方の総称のこと。
英語の「gender(性別)」と「neutral(中立)」を組み合わせてできた言葉です。
男だから、女だからこうあるべき、といった古典的に根づいている見方を取り払い、性別に縛られない行動や思考、社会を意味しています。
性別にとらわれない考え方が広まった背景には、女性の社会進出にともない文化的・社会的に男女差別が顕著化したことが大きく影響しています。
先進国を中心に女性の権利や束縛の解放を求める運動がおこり、現在もジェンダーニュートラルを求める活動は続いているのです。
ジェンダーニュートラルと聞いて、ジェンダーフリーや、ジェンダーレスなど類似する言葉を思い浮かべた方も多いことでしょう。
ここでは、このような関連用語の意味も解説していきます。
ジェンダーフリーは、ジェンダーニュートラルとほぼ同じ意味を指しますが、性別にとらわれず自由に行動することをメインに表す言葉です。
たとえば、女性は家庭に入るべき、男性は外で働くのが当たり前といった性別で役割を決めない考え方です。
ジェンダーレスは、男性ならズボン、女性ならスカートという性差による区別をなくし、性別の境界線をないものとする考え方を表しています。
ジェンダーニュートラルやジェンダーフリー同様に、性別で人を分けることに疑問を投げかける言葉のひとつです。
ユニセックスは主にファッション業界で使われる言葉です。
商品のターゲットを性別で縛らず、男女兼用を前提に作られる服やアクセサリーなどを示すときに使用されます。
LGBTQ+は、以下のような人々の頭文字を取り、まとめて表現している言葉です。
- L(レズビアン):女性同性愛者
- G(ゲイ):男性同性愛者
- B(バイセクシャル):両性愛者
- T(トランスジェンダー):心と体の性が異なる人
- Q(クエスチョニング/クィア):性自認・性的指向が定まらない人
- +(プラス):LDBTQ以外の多様な性のあり方
性的マイノリティの人々を総称するときに使用されます。
では、実際に行われているジェンダーニュートラルな世界を目指した取り組み事例を紹介していきましょう。
飛行機内などの公共交通機関ではアナウンスで「ladies and gentleman」と呼びかけるのが当たり前でしたが、男性、女性のみを指す言葉のため、取りやめる企業が増えました。
現在は「everyone」や「all passengers」など、性に中立的な表現が使用されています。
性別が採用条件などに影響しないように、履歴書にある性別欄を廃止する動きが進んでいます。
アメリカでは性別だけでなく生年月日、家族構成、婚姻状況、顔写真を求めることを違法とする「差別禁止法」が制定され、あらゆる側面からの差別を禁止。
日本にはこのような法律はありませんが、性別欄のない履歴書の販売が始まるなど、ジェンダーニュートラルな社会に向けた動きが出てきています。
海外では、日本語でいう「彼」や「彼女」といった三人称を性別で変化する言葉としてとらえ、廃止する動きがあります。
「he」や「she」は「they」に、警察官は「policeman」から「police officer」など、多くの言葉がジェンダーニュートラルな表現に変化。
日本では「看護婦」が「看護師」へ、「保母」が「保育士」、「女優」が「俳優」へと変化しており、性別で分けない呼び方が浸透しつつあります。
これまで、化粧は女性がするものという認識がありました。
しかし近年は、男性用のコスメブランドやジェンダーフリーコスメが多く登場し、性別を問わず美容アイテムに親しむ動きが出ています。
日本では、コスメブランドTHREEから年齢や性別などの既成概念にとらわれない「FIVEISM×THREE」がリリースされ話題に。
ファッションもユニセックスデザインが多く販売され、性別に左右されないファッションやメイクが楽しめるようになってきています。
おもちゃも性別の壁を取り払う動きが出ています。
アメリカでは一部の州で、男の子用、女の子用でおもちゃの売り場を分けない配置と、ジェンダーニュートラルな店舗づくりが義務化されるように。
日本でも、女の子向けのおもちゃに男性キャラクターが追加、お母さんキャラクターの衣装からエプロンが無くなるなどの変更が加えられています。
子どものころから性別によるイメージをなくすよう推進されているのです。
一般的なトイレには「男性用」「女性用」「多目的」の3種類が設置されていますが、性自認に合わせると、どれも入りにくいという問題が生じています。
そこで新たに登場してたのが性別に関係なく利用できる「誰でもトイレ」や「All Genderトイレ」です。
斬新な取り組みではありますが、、日本では「性犯罪が増えるのではないか」という声も挙がっています。
あらゆる人に配慮したトイレづくりは、今後も注目されることでしょう。
AI音声はこれまで、女性か男性の2種類しかありませんでした。
そこで、近年開発されたのが、女性でも男性でもない中性的なデジタル音声「Q」です。
性別による固定概念を与えない音声として、今後広く浸透していくと考えられています。
日本では、雇用面で男女格差が縮まらないことが、ジェンダーニュートラル関連の課題になっています。
では、具体的にどんな問題があるのかチェックしていきましょう。
各国の男女格差を数値化したものが「ジェンダーギャップ指数」です。
男女平等格差指数とも呼ばれ、自国の男女間にあるギャップを把握する指標となっています。
世界経済フォーラムが毎年発表する「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数報告書2023」によると、日本は146ヵ国中125位でした。
先進国の中では最も低い値で、アジア圏においても中国、韓国、ASEAN諸国よりも低い結果です。
世界で見ると、日本はまだまだ男女格差が残る社会となっています。
参考:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2023」
日本も長期的には男女間の賃金格差は縮まっていますが、世界レベルでみると、まだまだ男女差がある状況が続いています。
世界不平等研究所が発表した「世界不平等レポート2022」によると、日本の労働所得の中で女性が占める割合はG7各国と比較して他国を下回っています。男女間の賃金格差の縮小は、日本の今後の課題といえるでしょう。
参考:ニッセイ基礎研究所「世界の貧富格差、その現状・特徴と経済成長との関係」
2022年のOECD調査をもとにして作成されたデータによると「諸外国の女性役員割合」では1位のフランス45.2%、6位アメリカ31.3%に対し、日本は15.5%という結果でした。
G7諸国の中でも、日本は大差で最下位となっています。
結婚や育児を理由に仕事を辞める女性は減っていますが、日本は性別での役割分担意識が根強く残る国です。
最終的に仕事を辞める女性が多いことから、女性役員の割合が少ない結果につながっています。
参考:内閣府男女共同参画局「諸外国の女性役員割合」
ジェンダーニュートラルな世界を目指すためには、個人の意識を変えていくことが大切です。
紹介した取り組みは、社会にジェンダーニュートラルが意識された環境を根づかせるきっかけになるでしょう。
まずは、自分の発言、行動が固定概念にとらわれていないか、気づかないうちに誰かの性自認や性的指向を攻撃していないか、見つめ直していきましょう。
ジェンダーニュートラルな取り組みは世界中で進んでいます。
性別による固定概念や差別をなくすための取り組みで、生物としての身体的な違いを無視するものではありません。
国や企業で取り組むものもあれば、個人でできることもあるはず。
一人ひとりが性別に関係なく尊重される未来を、一緒に築いていきましょう。
- ジェンダーニュートラルは、男女の性差にとらわれない中立的な考え方の総称
- ジェンダーニュートラルが広まった背景は、文化的・社会的に男女差別が顕著化したことが影響している
- 機内アナウンスの呼びかけや、履歴書欄の性別欄の廃止などジェンダーニュートラルな取り組みは広まりつつある
- 日本は雇用面や働き方で男女差が大きく、先進国の中では圧倒的な後れをとっている
- ジェンダーニュートラルを実現するためには、個人の意識を変えることも大切
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